そもそも蒸溜とは何か、から始めよう。
もしも勉強熱心だった人なら、理科の授業を思い出してくれればいい。
蒸溜とは、水とアルコールの沸騰する温度の違いを利用し、発酵でつくられた
香りや味わいの成分を、アルコールと一緒に濃縮して取り出す過程をいう。
2回の蒸溜を経てできあがるのが「ニューポット」と呼ばれる無色透明のスピリッツだ。
これはアルコール度数が70%ほど。なかなかの破壊力だ。
主に直火蒸溜。
約1000度の直火で一気に沸騰させる。
間接蒸溜。120度の蒸気で間接的に熱することで、
雑味成分が取り除かれる。
16基のポットスチルは、すべて形がちがう。
例えば、まっすぐなタイプ(ストレート型)で蒸溜をすると、
もろみの成分がそのまま冷却装置へ送られるため、力強い重厚なニューポットができる。
一方でふくらみのあるタイプ(バルジ型)で蒸溜をすると、
ふくらみの箇所で気体となったアルコールの香味成分が還流を繰り返し、
軽やかなタイプのニューポットができる。
さらに同じ形であっても、大きさや首の角度の違いによっても、さらに個性が異なる。
一つたりとも、同じ原酒はつくらない。それがポリシーだ。
ポットスチルは、熱伝導のよい銅製。
釜の中でもろみが銅と接触していくうちに、新たな香味成分がつくりだされ、
洗練されていく。2013年に4基を増設した。
実はここまで
様々なポットスチルがある
蒸溜所というのは、
世界でも極めて珍しい。
スコッチウイスキーで有名な
スコットランドには、
そもそも蒸溜所がたくさんあり、
蒸溜所同士で原酒の
やりとりをすることで、
ウイスキーの個性を
出していくのだそうだ。
日本にはそれほど
たくさんの蒸溜所がないので、
こうして一つの蒸溜所の中で、
できる限りの多彩な原酒を
つくるように工夫している、
というわけだ。
物事にはすべて理由がある。
この極めて日本的な
創意工夫にも。