途方もない工程と時間を経てできあがった原酒を
最終的に受け取るのが、ブレンダーだ。
わたしたちは日々200~300種以上の原酒をテイスティングしながら、
熟成状況をチェックし、それぞれのウイスキーの特徴にあったものを
選び、配合を決定していく。機械ではない。
そこにあるのは、研ぎ澄まされた人間の感覚だけだ。
ちなみに、味覚が変わらないように毎日同じものしか食べない、
というブレンダーもいた。その執念こそが、ウイスキーをうまくする。
ブレンダーの仕事は、
ただ原酒をブレンドするだけでは終わらない。
新しいウイスキーの香味を創造したり、いまある製品の香味が変わらないよう
品質を維持することもブレンダーの役割だ。
時には、理想の樽材を求めて森にも入る。
多彩につくりわけられた原酒に、ブレンダーの確かな意志が
加わることで、山崎の味わいはできあがる。
そのどちらが欠けても、ウイスキーは完成しない。
さらに将来、
どんなタイプの原酒が
どのくらい必要になるかという
未来図を描くのも、
ブレンダーの仕事だ。
ウイスキーは熟成に長い時間を要し、
いま仕込んだものが使われるのは、
十年、二十年先。
わたしたちの頭の中には、
常に百万樽を超える
原酒が入っていて、
将来必要となってくる原酒を
イメージしながら、
日々管理をしていく。
ブレンダーはいつだって、
過去と未来と対話しながら、
今を生きている。